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2017年10月24日
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国立ロシア美術館展

2007年06月23日
http://www.rusmuseum.jp/index_pc.html
東京都美術館(上野)2007/4/28〜7/8
金沢21世紀美術館8/25〜9/29
愛媛県美術館10/3〜11/11
天保山サントリーミュージアム2007/11/20〜2008/1/14
東京富士美術館2008/1/24〜3/23

すばらしい。
かつて見て来た展覧会の中でも1・2を争う質の高さ。ロシアの近代美術がここまで素晴らしいとは思わなかった。
少しでも絵画に興味がある人であれば、この展覧会は見逃してはならない。絶対に見ておいたほうがいい!見ないのは人生の損失。そこまで言うよ!(笑)

どういった傾向の絵画だったかというと、表面上の技術は写真と見まがうリアルな筆致であり、清澄な空気を感じる明るく冴えた色味、主題は社会の一場面を切り取ったかのようなドキュメンタリズム、 印象は対象への愛着やシンパシーが感じられる人なつこさ、そして悲愴な場面でも漂うロマンチシズム。
なんとなく、ロシア音楽やバレエの世界(バレエはロシアで音楽化、舞踏化されたものが多い…と思う)で展開される妙にリリカルで陶酔的な雰囲気は、こうした文化ゆえなのかと納得した。
誰が見ても美しいと感じ取れる、鮮やかな絵画たち。
目にここちよいひとときが味わえます。

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とにかく目を見張るのは非常に写実的であること。
でもその写実は書き込みだけでつくり出されているのではなく、筆使いから生み出される凹凸がテクスチャになっていたり、意外に筆が早そう。特に鬱蒼とした樹木や草の群れを描いているシーシキンや、皇帝や自分に近しい人々の一瞬を切り取ったかのような肖像画家レーピンあたりは、下絵から作り込んで行くのではなく、いきなり色を乗せて巨大な画を完成させていったいったのではないかと思われる。すごい構成力と技術だ。

そういう技術を使って描かれるのは、擦り切れたボロ服をまとった貧しい農民家族のささやかな幸せを止め絵のように見せる絵だったり、結婚のお祝にわく家族の楽しげな情景だったり、貧しくて教育を受けたくても受けられず教室の入り口で躊躇する農民の子供の後ろ姿だったり。
社会批判として提出されている画題なので、過酷な状況の人々への憐憫を起こさせる絵だとも言えるのだが、なぜか陶酔的な美しさがある。リアルであるが客観性より叙情性を感じるのだ。私はあくまで絵画の内容を観測(そして画家周辺の妄想・笑)対象としてしか見ない性質なのだが、このロシア美術展の出展群は非常にシンパシーを感じる。目の前にいる絵の中の子供を抱きしめてしまいたくなるような気持になった。
囁きあう恋人たちも画家自身の娘も旅先の娘さんも皇帝閣下もシワまみれのじいさんも、すべてクスリと微笑んでしまいたくなる温かな身近さを感じる。画家達が草木も海も大地も含めて描写対象を愛してやまない気配が滲み出ている。
それにしてもリアリストなのかロマンチストなのかよくわからないロシア人(笑)。

もしかして、濁りのない透明で清澄な空気感のする色彩選択が現実感を希釈させているのかもしれない。しかしロシアって湿気が少ないからこういう見え方なのかな、とか全然ロマンチックじゃない結論も出てしまったけど。それは置いておいて、ロシアではそういう濁らない色味を好む素直な気質があるのかもしれない。


あと、幸運だったのはこの展覧会の前にロシア皇帝の至宝展を見ていたことだった。
ロシア王朝の歴史をざっくりと伺える「至宝展」の後の時代が、この「ロシア美術館展」での民衆の芸術の時代だからだ。この美術へ至るまでの流れが「至宝展」のおかげできれいにつながった。それにしても西ヨーロッパと断絶気味だったのが急にいろんな情報が入ってきて、択一していったら写実主義なロマン主義になったのがおもしろい。ちょっと英国のヴィクトリア朝絵画にも近い印象ももった。


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この感想を読んで見に行ったお友達が更に感想をかいてくれて、それを読んで気が付いたこと補足。
「墓地の孤児たち」。女の子が年の離れた男の子をおんぶしてる絵で女の子が呆けてるような微妙な表情をしている、と。
私の見解では「墓地の子供達」の女の子の顔は、本来赤味で表現する目もとやら鼻の穴の影部分に青が入っていて、もしかしたら凍死の一歩手前だという表現なのかなとも思える(男の子はその部分に赤味がある)。この両親を失った姉弟はさらに姉まで失ってしまうことを暗示しているのでは、て風にもとれるのではと。
そして「天地創造」はダイナミックな光・水・火・地の創造のシーンをわずか9時間で描いた大作ですが、案外みんな気が付いて無かったのが、「天地創造」のまん中の光の部分は腕を広げた老人(神だろうけど)の顔がかかれていたりしました(原物にものすごく近付かないと見えないくらい薄い色味)。

そしておなじ方の感想で「広大な大地を持ってて懐も深いはず。でも寒いときりきりするよね。家の中にまで寒々しい風景なんか飾りたくないから〜」とかかれているのを読んで、なんであんなに清澄でまばゆい大気感なのか分かった気がした。冬の凍てつく外気を連想しない空気と白夜で暗い世界から光を熱望するがゆえにあの色彩なのかもしれないなと。
現実を見過ぎると荒むから、荒んでたちゆかなくならないようにロマンチストなのかもしれないロシア人。

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とにかく、絵を描いている人も鑑賞しまくりたい人も見た目わかりやすいものがいいって人でも、見所がたくさんある思います。あんまり人が入って無いのがもったいないくらい。おかげでゆっくり鑑賞できて良かったけど、もっと多くの人に見て欲しい、すばらしい絵画展でした。
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